表彰式では赤井益久学長が「本学は日本の『国語』を大事にする大学。皆さんには、これからも日本語や文化を大切に発展させてほしい」とあいさつした。

審査員講評は部門ごとに行われ、短篇小説の部からは、作家の北村薫氏が「言葉を大切にすることは、何かを創り出すことにつながり、漫然と過ごしていた人生が変わってきます」と穏やかに語った。

現代詩の部は詩人の西岡光秋氏が「人間は目標をもつ動物です。健康を保ち、どうか皆さんも創作を続けてください」と熱いメッセージで講評に代えた。

短歌の部は歌人の田中章義氏が「4,120首の応募作の中から、何日もかけて皆さんの作品と向き合って選びました。間違いなく言えることは、皆さんには才能がある。きっと花開く人たちです」と大絶賛。

俳句の部の佐川広治氏は、「俳句は17文字しかなく、突然よい俳句ができることも。最優秀賞の俳句は『滴り』という言葉に感性が感じられた」と講評した。

国際化が進むが、紡ぐ言葉、伝える文化がなければ真の国際交流も平和への歩みもなさない。その意味でも頼もしい言葉の紡ぎ手たちが育っていることを実感できるコンテストとなった。

 

短編小説の部

今回の最優秀賞は該当作がなく、優秀賞3作品の受賞となった。

齋藤弥惟さん(千葉・志学館高等部2年)は、小説を書くことは将来の夢の一つという。今回初めて完結させたという受賞作「キューピッドと赤い糸」は、主人公自身の期待を裏切るオチで、齋藤さんが好きな星新一の作品を彷彿させるユニークなもの。

川名珠代さん(千葉県立安房高校3年)は、「煙草と絵の具の染みついたシャツとココア」というタイトルで、美術部を舞台とした油絵制作と静かに生まれた恋を描いた。ていねいな心象風景を捉えることで、「他の人の感情を真摯に考えられるようになった」と話す。

現代詩の部

間宮南帆さん(茨城県立水海道第一高校2年)の「魅かれる」は、授業の課題で書いたもの。まわりの人への感謝の気持ちや自分の素直な気持ちなど思ったことをそのまま書いて、最優秀賞に輝いた。

優秀賞の阿部咲恵さん(神奈川・横浜市立戸塚高校3年)は、朝夕で違う時間を指すアナログ時計に着想を得て、未来の自分にメッセージを贈った。 もう一人の優秀賞は、山崎華子さん(神奈川県立麻生高校2年)の詩は、どの家庭にもある寂寥感とあたたかさを同時に表現し、読む人の共感を呼ぶ。

■短歌の部

伊藤帆乃香さん(神奈川・日本女子大学附属高校2年)は、小学生の時に読んだ『はだしのゲン』を原風景に、毎夏、戦争文学を読み、そこから得た原爆投下後の親子の姿を歌った。

優秀賞の木村早希さん(福井県立高志高校3年)は、自分自身を鼓舞する歌を、白戸千恵子さん(東京・桜蔭高校2年)は、いちごで恋を表現した歌を詠んだ。

俳句の部

郷田翔太くん(福岡・西日本短期大学附属高校1年)の俳句は、繊細な感性で自然と命を詠んだ。「自然が好きで、小さな命でも大切にしたいという思いを込めた」そうだ。

優秀賞の坂井美穂さん(青森県立七戸高校3年)は、毎年、梅を漬ける祖母の姿を詠み、しその葉の赤で田舎の風景を表現した。