ヒットを生むカギを握る、「UXデザイン」って何だ?

「デザイン」と聞いて、高校生がイメージするものは何だろう。ファッションデザイン? インテリアデザイン? ポスターや広告をデザインするグラフィックデザイン? そうした従来のデザインとはまったく違うデザインが、今、企業から注目されている。それが、「ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイン」だ。

直訳すると「利用者の体験のデザイン」。だが、これだけで内容を理解するのは難しい。そこで、千葉工業大学 先進工学部知能メディア工学科の山崎和彦教授に解説をお願いしよう。「UXデザインとは、ユーザーが、楽しい、心地よいといった『よい体験』ができるようにするためのデザインのこと。これまでのような色や形を考える『モノのデザイン』に対して、『コトのデザイン』と呼ばれています」

なぜ、企業はUX デザインに注目するのだろうか。それは、単によいモノを作るだけではモノが売れない時代になったからだ。メーカーごとの製品の違いがほとんどなくなった今、ユーザーはモノ自体ではなく、モノを通して得られる「体験」をより重視するようになってきたのだ。

ユーザーの気持ちになって考える

では、ユーザーにとってどんな体験をすることが「よい体験」なのか。それを考えることからUXデザインはスタートする。「例えば、ユーザーがおばちゃんなら、おばちゃんの気持ちになって考える。自分がよいと思うかではなく、頭の中をユーザーの思考に切り替えることが大切です」

ただし、そうやって考えたことが本当にユーザーにとってよい体験になるとは限らない。そこで、ユーザーの観察やインタビューを行って、実際にどんな体験や価値を求めているのかを調査する。それを踏まえて、ユーザーによい体験をしてもらうために必要なモノを考えていく。最終的にはそれらをすべて作っていくが、モノづくりを目的とする従来のデザインとは発想の出発点が違うことがわかる。

UXという考え方に基づいて設計されたものは、高校生の身近にもある。LINEだ。LINEをやりとりすると、相手が書いた文章と自分が書いた文章が、顔写真付きで左右に分かれて表示される。メールなのに「対話しているような体験」が得られることが、ヒットした要因の一つだと山崎教授は言う。

企業とのプロジェクトで社会に生きるデザインを

山崎教授の研究室では、「笑顔になるような体験のためのデザインの提案」を目的に、企業や自治体と共同でさまざまなプロジェクトを進めている。「工場をバーにする」「トイレに行くのがもっと楽しくなるようなサインをデザインする」といったユニークなテーマにチームで取り組んでいく。

栃木県鹿沼市の特産品であるスギの木材を使ったアクセサリーの制作・販売も、プロジェクトの一つだ。同市の産業振興はもちろん、製品を買った人が「鹿沼市っていいね」と思ってくれるような体験の提供を目指している。現地の人と何度も話し合い、プロダクト、ポスター、カタログ、Webサイトなどのほか、売り方も含めたすべてを学生自身がデザインし、現地で販売する。そして、デザインしたコトやモノは、必ずユーザーに評価してもらう。それをもとに、さらなる改良を加えていく。デザインの中心にいるのは、常にユーザーなのだ。

プロジェクトから誕生した製品は、毎年イタリアのミラノで開催される世界最大規模の国際家具見本市「ミラノサローネ」に出展している。今年度は、製品を買った人とデザインした人がSNSでつながれる仕掛けを考え、自分たちの製品を通してどんな体験が得られるかを世界に発信できるようにした。

「この研究室はUXデザインを専門的に研究できる、日本でも数少ない研究室です。これからの時代、ユーザー体験という視点に基づいて発想しデザインする力は、プロダクト(製品)やサービスといった枠組みにとらわれず、さまざまな領域で求められると思います」

 お話を聞いた先生! 

 

 

 

 

 

 

山崎和彦教授
先進工学部 知能メディア工学科

 

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