完成したスケートリンクを見て笑顔の部員ら(大野隆介撮影)

横浜の冬の風物詩を地元高校生が彩る──。アイススケートとアートのコラボレーションで多くの人を楽しませている「アートリンクin横浜赤レンガ倉庫」(2月19日まで)。これまで12年にわたってプロが担当していたアート制作を任されたのが、神奈川・横浜平沼高校美術部。史上最年少の大抜てきだ。
(青木美帆)

全長65メートルの壁画に挑戦

同部はスケートリンクを囲む5つの壁画を制作した。テーマは「言葉でつむぐ日本の四季」。外国人観光客の多い横浜の土地柄を踏まえ、日本語と外国語を春夏秋冬に絡めて表現した。主催者や全体の演出を担当するプロアーティストと相談を重ねながら、壁の一部を立体にしたり、カメラのフラッシュをたくとネオンのように色とりどりに輝く仕掛けを作ったりするなど工夫を凝らした。

昨年4月下旬から構想を開始し、約8カ月かけて高さ約3㍍、全長約65メートルの大作を作り上げた。これほど大規模の作品に挑戦するのは初めてのこと。下絵を約10倍まで引き伸ばしたフィルムを使用する面の制作では、ぼやけた絵にならないように直径1.5ミリの筆を使って精緻な書き込みを追求した。1、2年生22人の総力を結集し、夏休みもほぼ週5日稼働。裏辻悠真君(2年)は「午前9時からスタートして、遅い時は午後4時まで描きっぱなし。3時ぐらいから、みんなぐったりしていました」と笑って振り返る。12月3日のオープニングセレモニーでは、感動で泣きそうになった部員もいたという。

アートで社会とつながる

県内の美術部の中でも有数の部員数を誇る同部は「アートを通して社会とつながろう」という部訓を掲げている。難病患者の心を癒やす作品を全国の医療機関に提供したり、地元の地域振興団体が主催するクリスマスツリーのデコレーションにも参加したりしてきた。

「アートリンクでも、プロの方々とやり取りをたくさんさせていただきました。部活でこんな経験ができるなんて思ってもみなかったです」と裏辻君。卒業後の進路に美術、デザイン、建築などの分野を志す生徒も多い同部は、将来に生きる貴重な経験を得られる場でもある。

【TEAM DATA】
部員31人(3年生9人、2年生12人、1年生10人)。黙々と制作に打ち込むのではなく、互いの作品に意見を出し合いながら和気あいあいと活動するスタイル。「明るさが平沼美術部の良いところです」(裏辻君)