デマに振り回されない! 賢いネットの情報収集術 元TBSアナウンサー 下村健一さんに高校生記者が聞いた

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 高校生にとって主な情報源といえるツイッターなどのSNSやインターネットのニュース。昨年はSNSでデマをつぶやいたとして逮捕者が出るなど、ネットの情報との向き合い方が問われた。テレビ報道の現場で四半世紀も情報発信を続け、現在は子どものメディア・情報教育に携わる下村健一さん(慶應義塾大学特別招聘教授)に、ネットの情報の正しい収集術を高校生記者が聞いた。(聞き手・芦刈深紗、岩城正姫、須藤亜佑美)

1つの情報源を鵜呑みにしない

──インターネット上の情報と新聞やテレビの情報に違いはありますか。

 「ネットだから」とか「新聞やテレビだから」とか、メディアの種類だけで情報の見方・信じ方まで決めつけてしまうのはかえって危険だよ。生まれたての赤ちゃんが初めて物を見るような目で、一つ一つの情報を先入観ぬきにジッと見つめよう。

──それでは、どのような情報を信じればいいのですか。

 ある情報に接したときに、1つの情報源だけで全てを鵜呑みにしないことが大事だね。なるべく、同じ情報に関して各メディアの伝え方を比べよう。そして何より、当事者本人はブログやツイッターでどう発信しているかなどをチェックしてみよう。

 大切なのは、自分の中にある情報を見るための「窓枠」を狭めないこと。その情報が正しいかどうかの結論を、今すぐに出す必要はないよね。「今はここまでしか分からない」「今のところはこんな感じなのか」と捉えよう。その時々に自分の意見を持つのはいいけれど、考えを固めてしまわずに、いろいろな見方の新しい情報を吸収し続けられるようになろう。

反対意見をあえて探そう

──インターネットから情報を得るときに、偏らないようにするコツはありますか。

 検索エンジンなどの技術が進んで、自分の興味ある情報はますます簡単に入手できるようになる。逆に言えば、ネットが親切になりすぎて自分の嫌いな意見や興味のない情報は届かなくなる、ということだ。好きなものだけ食べていたら、栄養バランスが偏って、健康を害することもあるでしょう。情報も同じ。あえて自分の気に入らない意見を発信する人をフォローするなど、情報バランスが偏らないように自分で工夫してみよう。

 また、使われている表現にそのまま乗せられず、どこまでが「事実」で、どこからが「意見」なのかを区別しながら、情報を読み取る訓練も必要だ。

 あるサイトが信頼できるかどうかは、「反対意見が受け入れられているか」「きちんと議論ができているか」なども、一つの判断基準になるね。

「ホント?」と疑問を持とう

──ツイッターで面白い書き込みを見ると、ついリツイートしたくなります。

 不確定な情報を拡散することで、君自身がデマを流す加害者になってしまう場合もある。情報を受け取る時だけでなく、発信する時も「まだわからないよね?」と考えることが大切だ。面白いと感じても、真偽が定かでないと思ったら、少なくともノーコメントではなく、「ホント?」とたった一言コメントをつけてリツイートするだけでも、受け手の印象は違うと思うよ。

──デマを信じて怒りの意見を発信している友人がいたら、どうしたらいいですか。

 そういう人って、視野が狭くなっていることが多いんだ。君がその意見に巻き込まれないことは大切だけれど、「NO、君は間違っている」と友人を否定することもない。「YES、そうかもね」と友人の意見を受け止めて、「BUT」でなく「AND」でつないで「こんな見方もあるよ」と他の情報を提示する。それで、その友人が情報を見る「窓枠」が広がったらいいね。

発信にも自覚を持とう

──私のツイッターのフォロワーは1000人を超えていますが、怖い思いをしたことはありません。ニュースになるようなケースは、特別なのではないですか。

 君にとってSNSは、1000人で回し読みする交換日記みたいな感覚かも知れない。でも、交換日記とは明らかに違って、SNSは世界と確実につながっている。普段は仲間内だけで楽しんでいる情報交換も、何かの拍子にポンと外に流れ出ると一瞬で世界中を駆け巡り自分に返ってくる。これは誰にでも起こりうるんだ。「普段は水鉄砲だけど、いきなり弾道ミサイルほどの飛距離に急変することがある」怖さを意識しながら、情報を発信しよう。

──インターネット上の情報に接することが多い私たち高校生は、今後どうすれば良いのですか。

 インターネットの急速な普及で、「メディアとの正しい接し方」を学ばないまま膨大な情報に触れる人が増えてしまったのが、今の状態だ。この記事を読んだ高校生は、ここで一緒に考えたことをより多くの高校生に広めてほしい。より多くの人が正しい接し方を身につけることが、インターネット上の情報をより良くしていくことにもつながるのだから。

(構成・山口佳子)

 18歳選挙権 
投票する高校生へアドバイス

 選挙でも結論を急ぐ必要はない。その時点で自分が分かる範囲で判断し、投票すればいい。選挙は投票して終わりではなく、むしろそこからがスタートだから。「あとはお任せ」にせず、投票した人をずっと見続け、育てていくことが本当の民主主義だ。自分が投票した政治家のツイッターをフォローしたり、ウェブサイトから質問するなど、ネットも活用して民主主義に参加し続けることが、投票者の責任だよね。

 しもむら・けんいち 1960年生まれ。東京大学法学部卒業。85年からTBS報道アナウンサーとして活躍。2000年独立。10年秋〜13年春、内閣広報室のNo.3として首相官邸の情報発信を担当。現在、慶應義塾大学特別招聘教授などのほか、小・中・高校などでメディアリテラシーや想像力育成の訪問授業を展開。公式ウェブサイト(http://shimomuraken1.com/)。

 インタビュー後記 
「私はこうする!」宣言

先入観を持たない

 どの媒体に載っている情報なのかは関係なく、先入観を持たずに情報を受け取って、それが正しいものか判断することが大切だと分かった。私は今までネットの情報は正しくないと思い込んでいたので気を付けようと思う。これからはニュースなどで情報を受け取るときも、SNSで拡散するときも「本当かな?」と考えるようにしたい。
(芦刈深紗)

自分の行動を客観的に見る

 私たちは無意識のうちに偏った情報を受け取ってしまう傾向がある。また、気づかないうちに加害者となってしまい、自分もいつ被害者になるか分からない。ほぼ制限がなくネット上で活動できるからこそ、自分自身が自分の行動を客観的に見て、正しく使うことを意識的に行おうと強く感じた。
(須藤亜佑美)

送信前に「自分で考える」

 SNSは簡単で危険に情報を発信できてしまうツールであると分かった。しかし、過度におびえずに、むしろSNSの特性を生かして今回学んだことを多くの人に伝えたい。今まではSNS、主にツイッターではただ情報を受信・送信するだけだったが、送信する前に「自分で考える」ことを心掛けたい。
(岩城正姫)

 もっと詳しく知りたい人へ 
下村さんの本をチェック

 「10代からの情報キャッチボール入門─使えるメディア・リテラシー」(岩波書店、1728円)を読めば、実際に起こった事例を検討しながら情報発信・受信の正しい力が習得できる。また1月末には、下村さんが各地の小学校で行った、想像力を磨く授業をまとめた「想像力のスイッチを入れよう(世の中への扉)」(講談社、1296円)が発売される。本の中のQRコードをスマホにかざすと、授業の様子が動画でも見られるよ!

(高校生新聞 2017年1・2月合併号から)

 

高校生記者

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