第10回全日本模擬国連大会で最優秀賞・優秀賞に選ばれ、国際大会出場を決めた6チーム

高校生が世界各国の大使になりきり、国連を模した会議で自国の国益を確保した「決議」の採択を目指す「第10回全日本高校模擬国連大会」(グローバル・クラスルーム日本委員会、ユネスコ・アジア文化センター主催)が11月12、13の両日、国連大学(東京)で開かれ、最優秀賞に渋谷教育学園幕張高校(千葉)と灘高校(兵庫)の両チームが選ばれた。

6チームが来年、ニューヨークの国際大会へ

今大会には、全国の135校202チーム(1チームは2人。1校から2チームまで応募可能)の応募があり、書類選考を通った64校86チームが参加。参加チームは2つの議場に分かれて議論し、議場ごとに最優秀賞1チームと優秀賞2チームが選ばれた。優秀賞は、桐蔭学園中等教育学校(神奈川)、開成高校(東京)、浅野高校(神奈川)、渋谷教育学園渋谷高校(東京)のチーム。最優秀賞、優秀賞の6チームは来年5月に米国ニューヨークで開かれる国際大会に派遣される。また、「ポジションペーパー賞」に、桐光学園高校(神奈川)と中央大学附属高校(東京)のチームが選ばれた。

「サイバー空間」めぐるルールづくりに挑む

2日間にわたり開かれた大会では、各チームが事前に割り当てられた国の大使となった。議題は大会ごとに変わり、今回は「国連総会の第1委員会(軍縮・安全保障委員会)の政府専門家会合」を舞台にした設定で、陸・海・空・宇宙に続く「第5の戦場」と言われる「サイバー空間」の国際的なルール作りをめぐり、各国の利害の対立を乗り越えた「決議」の採択をめざした。

各チームは自国の国益を守りつつ、他国と調整を重ねて多くの国が合意できる決議案(成果文書)の可決を目指す。公式のスピーチや文書作成は英語で行うが、非公式の交渉は日本語を使ってよい。非公式の討議のために、席を離れて、議場内を自由に動いて、国同士の交渉や複数の国でつくったグループ内での話し合いをする場面も多かった。

第10回全日本高校模擬国連大会のスピーチの様子

渋谷教育学園幕張「オランダ大使館を訪ねて聞き取り」

渋谷教育学園幕張高校の模擬国連同好会に所属する小寺圭吾君と髙橋千佳さん(共に2年)のチームはオランダ大使として参加し、最優秀賞に輝いた。オランダは、EU加盟国であり、表現の自由や基本的人権を重視する立場。2人は担当国が決まってから、議題についてのオランダの立場を検討したうえで、オランダ大使館を訪問した。「オランダの立場について確証が得られ、自分たちでは判断しきれなかった(議題について)どこまで譲歩できるかを詳しく聞けました」(小寺君)。このことが議場での判断に役立ったという。

会議の時間は限られており、事前の準備が成否を分ける。「この時間までにこれをしようと、ペアで決めて臨みました」(髙橋さん)。英語での文書作成が髙橋さん、他国との交渉が小寺君と分担も決めて会議に臨んだ。会議では、オランダが中心となったグループがまとめた決議案が可決され、講評でも「ペアの協力体制が見事で、グループの手綱を握りつつ、グループ外の交渉も欠かさなかった」と評価された。

大会の準備は連日行い、定期試験の勉強との両立にも苦労した。堂々の最優秀賞だが、「全会一致にならなかった」と残念がる2人。「200チーム以上の応募があり、校内選考もあった。(国際大会では)彼らを代表して頑張りたい」(小寺君)と意気込む。

第10回全日本高校模擬国連大会の討議の様子

灘「信頼関係づくり、議場全体の把握に工夫」

灘高校の北口智章君(2年)と柳津聡君(1年)のチームは、もう1つの議場で最優秀賞に選ばれた。2人は学校のディベート同好会と新聞委員会に所属する先輩・後輩ペア。前回の国際大会に出場した生徒らが校内選考にあたって出場チームを選んだ。「かなり厳しく選考されました」(柳津君)。大会ではベラルーシを担当し、2人が中心となってまとめた決議案が可決された。講評では「会議を通じリーダーシップを備えていた。グループ内の国に友好的、かつ効果的に議論を進めた」などと評価された。

講評の通り、会議中はグループ内の他国への気配りを欠かさなかった。「(国同士は)支配する、される関係ではなく対等で、お互い信頼し合って一つの成果文書をつくるのがグループにとっての理想です」(北口君)。信頼関係を築こうと、話し方も気遣った。相手が言ったことへの理解を言葉に示して頷く。仕事をしてもらったら感謝の言葉を口にする。議論のスピードが速い時は、皆がついていけているか、確認する。「人間として基本的なことをしっかりやるのが交渉においても重要です」

事前に、学校でほかの生徒に手伝ってもらい、議場でのふるまいや言葉遣いの練習をした。「関西弁で話すのがいいか、標準語がよいかまで真面目に議論しました。結論的には、そんなことを気にしない自然体が良いということになりましたが(笑)」(北口君)。関西の高校による練習会議にも参加した。灘高校卒業生によるアドバイスも役立ったという。

「サイバー空間」と日常から離れたテーマに取り組むにあたっては、図書館で文献を調べたが「専門的な内容が多くて非常に難しかった」。このテーマに関する国連での過去の議論を英語の資料で読んだのが役立ったという。会議には、多くの国が受け入れ可能な決議案を英語で用意して臨んだ。議場では、自分たちのグループをまとめるのが柳津君、ほかのグループの動向を探り、交渉するのが北口君という分担にして、議場全体を視野に入れて各国がどんな考えをもっているのか、把握するようにした。政策のメモを印刷しておき、他国に配ったり、グループ内の他国に頼んで他グループに出向いてもらったり、「チームプレイ」も駆使した外交が奏功した。

灘高校は2年連続の国際大会出場。北口君は「とにかく楽しみです。受験生なので、後輩の柳津君に頑張ってもらいたい」と笑顔を見せ、柳津君は「頑張ります」と応じた。