今年の国際科学オリンピックに挑んだ高校生(8月9日、各分野の代表選手が参加した記者発表会で)

 世界の高校生が科学の実力を競う国際科学オリンピック(7分野)が7月から8月にかけて開催され、日本の高校生延べ31人が出場。金メダル11個を獲得するなど活躍した。メダリストに科学の魅力を聞いた。
(山口佳子、西健太郎)

 科学オリンピックは、筆記や実験、フィールドワークなどの問題に各国代表生徒が挑む。メダルの授与基準は分野によって異なり、金メダルはおおむね成績上位8〜10%に与えられる。髙谷悠太君と井上卓哉君は数学と情報で、坂部圭哉君は化学と地学でメダルを獲得した。

幅広く学ぶのが面白い

 科学のどこに魅力を感じているのか。物理で金の福澤昂汰君は「身の回りのいろいろな現象について数式で説明できるところ」と語る。生物学で金の外山太郎君は「生命とは何か、自分とは何かという疑問に、ある一つの答えを与えてくれること」と言う。髙谷君は「数学には解答を導くパターンがたくさんある。新しい問題に出合うたび、どう解こうかと試行錯誤する過程が面白い」と話す。

 出場した分野に限らず幅広く学んでいる生徒が多い。外山君は4分野の国内大会に出場実績がある。坂部君は「科学全体が面白い。それぞれの分野が独立しているのではなく、化学の現象が物理法則の結果だったり、物理の式変形が数学の結果だったりする。全体を学ぶことで根底が見えてくる」と語る。地学で金の廣木颯太朗君も「地質での物の風化が化学反応と関係するなど、違う分野が融合するのが面白い」と語る。

「何でだろう」疑問が大事

 科学オリンピックを目指す高校生へのアドバイスを聞くと、廣木君と坂部君は「何でだろう?と疑問を持ちながら勉強すること」と口をそろえる。情報で銀の増田隆宏君は「プログラミングの楽しさを実感して参加すること」と話した。

日本選手の成績(敬称略)

 数学  (7月10〜15日、中国)
【金】髙谷悠太(東京・開成2年)【銀】青木孔(東京・筑波大学附属駒場3年)、藏田力丸(兵庫・灘3年)、松島康(東京・都立武蔵2年)、村上聡梧(東京・筑波大学附属駒場3年)【銅】井上卓哉(開成3年)

 物理  (7月11〜17日、スイス・リヒテンシュタイン)
【金】福澤昂汰(筑波大学附属駒場3年)、吉田智治(大阪・大阪星光学院3年)、渡邉明大(奈良・東大寺学園2年)【銀】吉見光祐(灘1年)【銅】高羽悠樹(京都・洛星3年)

 生物学  (7月17〜23日、ベトナム)
【金】外山太郎(宮崎・宮崎西2年)【銀】村上侑里夏(東京・桜蔭3年)、中桐悠一郎(北海道・立命館慶祥2年)、保呂有珠暉(灘1年)

 化学  (7月23日〜8月1日、ジョージア)
【金】坂部圭哉(愛知・海陽中等教育学校5年)【銀】秋山茂義(東京・筑波大学附属3年)、海士部佑紀(灘2年)、平翔太(灘2年)

 情報  (8月12〜19日、ロシア)
【金】井上卓哉、髙谷悠太【銀】増田隆宏(筑波大学附属駒場3年)、川﨑理玖(筑波大学附属駒場2年)

 地理  (8月16〜22日、中国)
【銀】大鶴啓介(千葉・渋谷教育学園幕張3年)、松藤圭亮(福岡・修猷館3年)【銅】佐藤剛(筑波大学附属3年)【参加】青木慧(筑波大学附属駒場3年)

 地学  (8月20〜27日、三重県)
【金】笠見京平(広島・広島学院3年)、廣木颯太朗(東京・海城3年)、坂部圭哉【銀】神原祐樹(大阪・北野2年)

(高校生新聞 2016年10月号から)