笑顔で声を掛け合う下北沢成徳の選手たち

 全国高校総体(インターハイ)バレーボール女子決勝は8月7日、山口県防府市のソルトアリーナ防府で行われ、下北沢成徳(東京)が2014年の優勝校・金蘭会(大阪)をストレートで破り、14年ぶり2度目の優勝を果たした。昨年、東京都予選で敗退した悔しさを、気持ちの入った練習に替え「パワーバレー」を爆発させた。1月の「春高バレー」に続く日本一だ。(文・南隆洋、写真・幡原裕治)

「ベスト6」と「優秀選手」に選ばれた下北沢成徳のエース黒後愛

追いつかれても冷静

男子に続き、決勝は東京―大阪の対決となった。ともに最高到達点3メートル前後のスパイカーをそろえた大型チーム。

第1セット。アタックの応酬となり、下北沢成徳が先攻し金蘭会が追う展開。13‐13となったあと、下北沢成徳がエースの黒後愛、堀江美志(ともに3年、ベスト6、優秀選手賞受賞)に球を集め突き放した。

「ベスト6」と「優秀選手」に選ばれた下北沢成徳の堀江美志

第2セットは、強烈なスパイクを拾ってはつなぐ息詰まるラリーを重ね22‐22。下北沢成徳は追いつかれても懸命に声を出し、山口珠李(3年、優秀選手賞)が冷静に狙いすましたアタックを決めた。第3セットは下北沢成徳がリベロ岩澤実育(2年、リベロ優秀選手賞受賞)を中心とする堅実な守備と緩急をつけた攻めでリード。石川真佑(1年)が伸び伸びとしたアタックで得点を重ねた。

金蘭会は1、2年生が半数で、来年に期待をつないだ。

強打に屈せず堅実な守りでチームを盛り立て「リベロ優秀選手」に選ばれた岩澤実育

決勝で14得点を挙げた下北沢成徳の石川真佑

ハンディを体と心のパワーに

下北沢成徳は体育館が他の部と兼用のため、専用で使えるのは週3日だけ。練習時間のほぼ半分が、グラウンドで50~800㍍などを組み合わせたダッシュと走り込み。さらにウエートトレーニング、体幹トレーニングなど。小川良樹監督は卒業後を見据え、選手に「アスリートとしての体づくり」と「自分で考える」ことを求めている。

昨年、都大会で敗退し8年ぶりにインターハイ出場を逃したあと、現主将の冨沢麻里香(3年)を中心に「みんなで勝つ」「やるべきことをやる」ことを目標に上下級生、レギュラー・ベンチの別なく、これまで以上に声を掛け合い、自分の弱点を見極めて、集中した練習に取り組んできた。

ベンチから大声を出し、仲間を励まし続ける下北沢成徳の冨沢麻里香主将

 入学当初、20キロのバーベルを持ち上げるのが精いっぱいだった堀江は、今では95キロを軽々と持ち上げるパワースパイカーに成長。

堀江と黒後、山口の3人がアジアジュニア選手権(7月23~31日、タイ)の全日本代表で、大会直前に一緒に練習できたのは1日だけだったが、試合を重ねるごとに結束を強め、決勝にかけて盛り上がってきた。

小川監督は「昨年の悔しい思いのあとの努力が、今日のパンチ力を生み出した」と選手をたたえた。

「優秀選手」に選ばれた下北沢成徳の山口珠李

超高校級チームへ

下北沢成徳は、今年の春高バレーで3年ぶり3度目の優勝を決めたあと、5月の黒鷲旗全日本男女選抜大会で、プレミアリーグ7位のデンソーを破り、その実力が“超高校級”であることを証明した。大山加奈、荒木絵里香、木村沙織らオリンピック選手を輩出しており、体づくり・心づくりを基本においた監督の長期的視野に立った選手育成が注目を集めている。

笑顔とコミュニケーション。みんなの和で「日本一」をつかんだ下北沢成徳

 【バレーボール女子決勝】
下北沢成徳(東京) 3―0 金蘭会(大阪)
(25―21、25―23、25―18)

【バレーボール女子・ベスト6】
黒後愛(下北沢成徳3年)、堀江美志(同)、島田美紅(金蘭会3年)、宮部藍梨(同)、小川愛里奈(岡山・就実3年)、中川美柚(大分・東九州龍谷2年)