取り組みが評価され、全国表彰を受けた化学研究部。表彰盾を手にする髙木都美(みやび)さん(3年、左)と松岡佑依さん(2年)=新海美保撮影

ものづくりを通したボランティア活動に力を入れる岐阜・岐阜工業高校化学研究部は、歴代の先輩たちから引き継いだ消しゴム作りのノウハウを生かして、環境に優しい「光るエコ消しゴム」を開発。東北の被災地やカンボジアに寄贈するなどして、子どもたちを支援している。
(新海美保)

暗い場所で煌々(こうこう)と光るエコ消しゴム(提供・岐阜工業高校)

被災地の子どもたちに笑顔を

「東日本大震災で停電になった時、被災した人は暗闇に光る星を見て安心したと聞いた。それが光る消しゴムが生まれたきっかけ」と語るのは、同部の髙木都美(みやび)さん(3年)。

光る消しゴムは、太陽や蛍光灯の光のエネルギーをため込み、暗い場所で光る特徴を持つ「蓄光剤」を活用して制作。研磨剤に卵の殻を利用するなど環境にも配慮した。2011年から、岩手、宮城両県の仮設住宅や学校で子どもたちに配ったり、一緒に作ったりするプロジェクトを続けている。

15年夏に東北を訪問した髙木さんは「共同制作を通じて子どもたちの笑顔を見るのがうれしい」と話す。一方、子どもたちへのアンケートに記された「嫌な過去を消せる消しゴムを作ってください」との言葉を見て、笑顔の奥に隠れたつらい記憶や経験を垣間見た。

近隣の小学校で出前講座を実施。光る消しゴムで作ったオブジェの写真を手に、東北で見てきたことを伝える(提供・岐阜工業高校)

地道な活動が評価を受ける

地域の小中学校やイベントなどで、消しゴムの作り方や原料、光る原理、ものづくりの面白さなどを伝えているほか、15年にはカンボジアの子どもたちに消しゴムを届けた。

地道に続けてきた取り組みが評価され、15年度には中高生のボランティア活動を支援する「ボランティア・スピリット賞(アワード)」で、文部科学大臣賞に次ぐSOC奨励賞を受けた。授賞式に出席した松岡佑依さん(2年)は「全国から集まった志の高い中高生と出会い、刺激を受けた」と話す。

同部は授賞式で、ハンセン病の問題に取り組む香川県の中学生たちと知り合った縁で、今夏には香川県を訪問予定。ハンセン病患者が暮らす療養所のモニュメントの形をした消しゴムを一緒に作るプロジェクトを計画している。

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ボランティア・スピリット賞の授賞式に参加した松岡さん(左)、髙木さん(中央)、顧問の古家正明先生(提供・岐阜工業高校)