最近よく耳にする「リスクマネジメント」って何?

みなさんが毎日楽しい高校生活を送る上で欠かせないものといえば、スマートフォンではないだろうか。LINEなどのSNSにはまり、片時も手放せない人もいるかもしれない。でも、ちょっと待った。スマートフォンを使う時に、個人情報が流出したり犯罪に巻き込まれたりする危険性があることを意識しているだろうか。

「スマートフォンに限らず、快適さや利便性を追求していくと、メリットだけでなくデメリットが必ず伴います。こうしたデメリットをどう回避するか、あるいは低減するか。それを考えるのが、リスクマネジメント(管理)です」と話すのは、千葉工業大学社会システム科学部 金融・経営リスク科学科の髙木彩准教授だ。 リスクとは、起こってほしくないことが起こる可能性のこと。交通事故、自然災害、犯罪など、私たちの身のまわりにはさまざまなリスクが存在する。「そんなネガティブなことをなぜ研究するの?」と思うかもしれないが、どこにどんなリスクが潜んでいるかを知っておけば、事前に対策を立てられる。もしもそれが実際に起きた時に、被害を最小限に抑えられるのだ。

 

幅広い視点からリスクを考える

金融・経営リスク科学科では、「金融・情報・生産・生活」の4分野からリスク管理にアプローチし、リスクを発見し、情報を集め、それを数値化・分析した上で、対策を立案できる能力を鍛えていく。

例えば、金融機関が投資をする際、損失を出さないためにはどうすればよいのか。IT化が進む今、情報漏えいやサイバー攻撃をいかに防ぐか。安全な製品を作るためにはどんな対策が必要か。食の安全や自然災害、環境問題といった社会全体に関わるリスクにどう対処し、安心して暮らせる社会を作るか…など、扱うテーマは多彩だ。

「企業活動では、金融リスク対策はもちろん、情報リスク対策や生産現場での事故防止対策なども必要になってきます。1つの分野からだけでなく、幅広い視点からリスク管理を考えることが大切です」。

 

「安全=安心」とは限らない

髙木准教授の専門は社会心理学。「そう聞いて、ちょっと意外に思う人もいるかもしれませんね。心理学がリスク管理にどう関わるのか、と。食の安全や自然災害のような社会全体に関わるリスクを管理する場合は、安全性や危険性を一般の人々に正しく伝えていかねばなりません。そのためには、人々がリスクに対してどう考え、行動するかを研究する必要があるんです」

ただ「安全です」と言うだけでは納得してもらえない。根拠を示すことが必要だ。だからといって、専門家がもつ知識や専門用語をそのまま伝えても、受け手が理解できるとは限らない。「重要なのは、人々がそのリスクに対してどんなイメージをもち、何を不安視しているのかを把握した上で、人々が知りたい情報をわかりやすく伝えること。そのためには、企業、専門家、行政、人々が相互にコミュニケーションし、信頼関係を築くことが欠かせません」

髙木准教授によれば、「安全」と「安心」は必ずしも一致しないそうだ。「例えば、食品添加物の入った食品は健康によくないと思われがちです。実際には、食品添加物には腐敗や食中毒の発生を抑えるというメリットもあるのに。その一方で、家庭で手作りした食べ物なら安心、というイメージが強い。もしかしたら、十分に洗わない手で作って、有害な菌がついているものかもしれないのに。私たちは安全なのに不安を感じたり、安全でないのに安心感を抱いたりしてしまいます。こうした『安全と安心のズレ』を正す情報を発信することも大切です」

リスクを学ぶことは、安全で安心できる社会の実現につながる。「何かを遂行する時、想定すべきリスクを指摘し、それを踏まえた的確な提案ができる力は、この先社会のどんな場面でも役立つはずです」

 お話を聞いた先生! 

髙木 彩准教授 社会システム科学部 金融・経営リスク科学科
 



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