練習に励む山口茜。相手のスマッシュに素早く対応するフットワークの良さが光る(2月13日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンター)

 

バドミントンの山口茜(福井・勝山3年)は今年度、最後の全国高校総体(インターハイ)制覇と、2016年開催のリオデジャネイロ五輪出場に必要なポイント獲得に挑む。「勝つことでバドミントンを楽しみたい」と意欲に燃えている。
(文・石井宏美、写真・幡原裕治)

世界ランク11位

女子バドミントンの世界ランキングで、山口は11位に名を連ねる(4月23日時点)。1年前の80位台から大幅に順位を上げたのは、世界を転戦する中で、粘って崩すというプレースタイルを築き上げ、大舞台で勝てるようになったからだ。昨年11月には中国オープンで準優勝と、世界の主要大会で結果を残している。
 
 昨年12月に行われた全日本総合選手権では、女子シングルスで初優勝。2年前は自身でも「現実味がなかった」というリオ五輪を狙える位置につけ、周囲からの期待は日増しに高まっている。しかし、山口はプレッシャーを全く感じていない。「自分は応援を力に変えていけるタイプ。『声を掛けてくれる人たちのために頑張ろう』って思えるんです」

地元・勝山に誇り

日本代表の活動がないときは、高校の部活で研鑽を積む。故郷の福井県勝山市を愛する山口は、地元代表として出場するインターハイに並々ならぬ意欲を燃やしてきた。今年はランキングのポイント獲得対象となる世界選手権と日程が重なるが、インターハイを優先したいと考えている。「出場しなかったら、高校進学の時に地元に残る選択をした意味がない。高校最後の1年は勝山市の人間として戦いたいんです」
 
 世界大会で勝つ力がある山口ならば、たとえ世界選手権を見送ってもほかの大会でポイントを穴埋めできる。インターハイで女子シングルス3連覇と学校対抗優勝を果たし、リオ五輪出場のためのポイントも獲得することが今年度の目標だ。
 「誰よりもバドミントンを楽しみたい。そのためにも勝ちたいんです」

  インタビュー 
 世界で戦える手応え得られた
 
――山口選手にとって2014年はどんな1年でしたか?
 
「初めて国際大会の上位大会(BWFスーパーシリーズファイナルズ2014)に出場したのですが、ベスト4という結果を残すことができたので、良い1年だったと思います。以前は全く歯が立たなくて、『頑張って少し競ることができれば』くらいに考えていたのですが、去年はいい勝負ができたし、特に後半は勝てるようにもなって自信になりましたね。『世界で戦える』という手応えが得られました」
 
――国際大会ならでは経験は?
 
「様々な国に行けるのが楽しかったです(笑)。あとは、いろいろな国の、いろいろなタイプの選手と対戦できたことですね。それぞれ対策を講じるのは大変でしたが、それ以上に楽しかったです」
 
――印象に残っている国は?
 
「遠征ではほとんど観光できないのですが、オーストラリアやニュージーランドは景色がきれいでしたね。初めて観光できたフランスが一番印象に残っているかな(笑)。エッフェル塔と凱旋門に行きました」
 
――自分のプレーが相手に研究されていると感じたことは?
 
「それはありました。でも、狙われているところが分かれば対処できますし、試合中はそんな駆け引きも面白いです」
 
――国際大会、高校での大会と多忙ですが、リフレッシュ方法は?
 
「やっぱり家に帰るのが一番です。合宿や遠征も後半になると、『家に帰りたいな』と思います(笑)。家では本や漫画を読んだり、寝たりしてリフレッシュしています。最近は『陽気なギャングが地球を回す』を読んでいます」
 
――今後の課題は?
 
「体力には自信があったのですが、昨年国際大会で2、3週連続して試合が続くと、試合後半まで体力が続かずに負けることが多かったんです。試合ではもちろん、合宿でもしっかりと最後まで体力が続くようトレーニングしていきたいです。また、今年は地元の仲間と出場する最後の高校総体があるので、全種目で昨年以上の結果を上回って笑顔で終わりたいです」
 
――来年のリオ五輪、5年後の東京五輪に向けての意気込みは?
 
「出られるものなら出たいです。東京であれば、応援してくれる方、見に来てくれる方も多いと思うので。もし、出場することができれば、それまでの感謝の気持ちをプレーで伝えられたらいいなと思っています」
 
(2015年2月13日取材)
 

 やまぐち・あかね 1997年6月6日、福井県生まれ。勝山南部中出身。2011年、全日本総合選手権に史上最年少の14歳で出場。中学3年だった12年に史上最年少で日本代表入り。13年にヨネックス・オープン・ジャパンで日本人初優勝。156センチ、55キロ。