電動ろくろを前に笑顔の建築インテリア創造科の生徒たち。中央は荻阪先生。

堺市立堺高校建築インテリア創造科の2、3年生は、ものづくりから 販売まで学ぶ課題研究に取り組んでいる。今年の研究テーマは、 和食を通じた”食育”だ。 (文・写真 坂祐三)

ろくろ作業に悪戦苦闘

2008年、4つの専門高校の統合で創立した堺高校。建築インテリア 創造科の3年生20人は課題研究の授業で実習室にいた。黙々とろくろを回し続ける真剣な表情に、作品に心を込めるという意志が宿っている。
 昨年ユネスコ無形文化遺産に指定された「和食」にスポットライトを 当て、「食育」の一環として食器を自らの手で製作している。この授業で製作したものを、秋に行われるイベント「堺高フェア」で生徒たち が一般の来場者に販売する。
 この日は、お椀や小さなコップの製作を手掛けた。数人をのぞき陶 芸は初心者だ。取り組み始めた4月は、柔らかい土を目標の形に整えるのも大変だったが、毎週、実習で4時間、課題研究で3時間を かけて腕を磨き、ようやく商品として出せるようなものを作れるようになってきた。
 「もっともっと技術を身に付けて向上し、より多くの人に堺高ブランドを知ってもらいたいです」と森園陽菜さん(3年)は熱っぽく話す。西田佳奈さん(3年)も「人に頼らず自分の力で良いものを作ることを学んでいます」と手応えを語る。
 今後生徒たちは、とっくりや箸置きなどを製作する。

ものづくりは人づくり

指導する荻阪樹一先生は「ものを作るだけでなく、人間作りが目標」 と、忍耐強さが要求される食器を作ることによって人間力が養われることを強調する。
 堺高フェアでの売り上げは東日本大震災の被災地に寄付する予定 だ。生徒たちは和食の器づくりから、一つひとつの行動をおろそかにしない、大切な心を学んでいる。

市施設への製作物寄贈も企画

堺市と建築インテリア創造科がタイアップし、住民の憩いの場「都市緑化センター」に生徒が製作したベンチ、椅子を寄贈し、施設内の「 里山の庭」に古民家風の建築物を設置する計画も進んでいる。6月下旬に市への提案を控え、桝田光平君(3年)は「今ある里山の概念を崩すような提案をしたい」と意欲を語る。