昨年、史上最年少でバドミントン日本代表に選ばれた山口茜(福井・勝山1年)=福井・勝山南部中出身。強豪校からの誘いを断り、地元の公立高校で日々の練習に励む。今年9月の国際大会「ヨネックスオープン・ジャパン」(東京)では日本人初の女子シングルス優勝を手にした。(石井宏美)

小学校、中学校と世代別のタイトルを獲得し、ついに世界女王に輝いた。まさに「スーパー高校生」の誕生だ。

バドミントンを始めたのは5歳のころ。2人の兄の練習に付き添ううちに、自然とラケットを持つようになった。「(負けると)悔しくて、よく泣いていた」が、決してラケットを振ることはやめなかった。大の負けず嫌いだ。

小学生の時は、試合中でも劣勢になるとよく泣いた。「泣かなければ負けなかった試合もたくさんあった」 年を重ね、次第に感情をコントロールする大切さを痛感するようになる。今では試合中に感情を表に出すことはほとんどない。周囲から「何を考えているか分からない」と言われるほどポーカーフェースだ。

中学生になると、地元のクラブチームや勝山高校の男子選手を相手に練習し、めきめきと力を付けた。男子のスピードとパワーに圧倒されながらも「相手のプレーや試合を『読む』重要性を知ったことで、さらに成長できた」と実感している。

 

高校進学の際は、県外の強豪校に進む選択肢もあった。それでも生まれ育った地元・勝山高校への進学を決めたのは「これまで戦ってきた仲間たちと、共に上を目指したい」という強い思いがあったからだ。

勝山には頼りになるコーチや、全国大会を経験した卒業生、さまざまなプレースタイルの選手が数多く存在する。幼いころからこの環境の中で強くなってきたという自信が、地元で挑戦するという決断をさせたのだろう。今夏のインターハイ女子学校対抗で3位に入賞した時は、自らのシングルスでの優勝以上に喜んだ。

現在は平日2時間、休日に5時間半ほど練習している。特別に用意されたメニューはなく、他の部員と共に汗を流す。日本代表合宿で得たコーチからのアドバイスをノートにまとめ、今もよく読み返すという。

3年後のリオデジャネイロ五輪、そして7年後の東京五輪も「まだ現実味はない」と淡々と語る。今は目の前の試合を、一戦一戦全力で戦っていくつもりだ。

やまぐち・あかね 1997 年6 月6日、福井県生まれ。全国小学生バドミントン選手権で史上初の4 連覇を達成。2011 年の全日本総合選手権に史上最年少の14 歳で出場。昨年の世界ジュニア選手権では、史上最年少で銀メダル獲得。156㌢、55㌔。